酒造起業の道

 たいていの製造業の場合、典型的な成功譚はというと、わずかな資金で小さく起業。軌道に乗ったら徐々に拡大して、やがて地域一番に、さらに国内で一目置かれる企業にという流れでしょう。アメリカンドリームなんてのは、まさにそんな絵に描いたような話をさしてますよね。
 しかし、酒造業の場合、酒税法で最低製造量がかなり多めに定められていて、結構大きな製造場でないと開業できません。どのくらいかと言えば、清酒やビールの場合だと年間60キロリットル。一日だと200リットル。大体一日平均で20〜25ケースくらいを出荷する勘定です。設備も大掛かりですし、初期投資も相当なものになります。それも最初からですよ。

 たいするアメリカやヨーロッパでは、家庭の台所みたいな規模で製造し、自分の家族で経営する飲食店で売り切るようなところもありますし、そこから始まって、だんだん規模を拡張してやがては国内でも指折りの企業になったところもあるそうです。これが普通ですよねぇ。しかも、小規模事業者への税制優遇も手厚いそうですし。
 日本の酒業界もそういうふうにならないものかと思っていましたが、先日こんな記事が目に留まりました。

自家製梅酒OKに 税制改正、民宿や料理店で
みなし製造の適用除外の法改正 料飲店での梅酒・前割りを容認 

 まだ成立前ではありますが、この制度が始まれば、自作の果実酒を自分の経営する居酒屋でだし、軌道に乗ってからは小規模工場を開始。ゆくゆくは大掛かりな工場を建設して一大企業へ・・・という、可能性が生まれたわけです。
 もちろん、現在の酒の業界でこんな上手い話はまずありえませんが、最初から全く不可能なのと、きわめて困難でも可能性はわずかでもあるのとでは大違いです。やっと、普通の業界になったとでもいえましょうか。

 清酒どぶろくもそういう道が開かれて、今までとは違う道筋で活気が生まれて欲しいと思います。清酒業界の大変さは分かりますけど。こういう形での新規参入もあっていいのでは?