いわて蔵ビール こはるビール 500円也

 子供の頃の話になりますと、たいていの皆さんに、一つや二つくらい自慢できるものがあるのもで、運動会で一等賞に縁の無かった、わたしみたいな文型肌の人でも、作文コンクールで三等賞だったとか、写生コンクールで入選をもらったとか。
 私の場合、今から十年ほど前の話なんですが、わたしが大学の四回生だったときに、懸賞論文に応募して入賞したことが自慢話です。なに、いたって応募が少なかったからで、たまたまなんですけどね。
 その内容には、農産物の地元消費を進めようというようなことを書いていました。まだ、地産地消という言葉が世にでる前で、道の駅が出来だして3年目くらいの頃ですから、ちょっとばかり先進的に見えたんでしょうね。これも、大学時代を通じて、地元の農産物を上手く地元で食べる運動を進めてきた方々とのお付き合いがあったお蔭です。

 そんな大学時代を送ったものですから、地元のものを使った加工品というものにも興味があるわけです。地ビールは、町のパン屋さんみたいなもので、地元の素材を使うわけではないという意見もあります。しかしまた、地元の小麦粉を使ったパン屋さんが魅力的であるように、地元の素材を使った地ビールが、魅力的であるのも事実です。

 このこはるビールは、そんな地元の大麦を地元で麦芽に加工して、それをビールにしたもので、わたしの趣味というか志向に合致した実に魅力的なビールです。


 というわけで、開発段階から気になって仕方が無かったビールをようやく飲んでみました。
 色は淡く、泡立ちは普通でしょうか。香りはすっきりしたホップの香りと、エールの華やかな香り、それに麦の良い香りがします。
 飲んでみますと、麦の印象を引き立てるようなほど良い苦味。麦の風味は、気のせいか一味違います。これが岩手県が開発した新品種の持ち味なんでしょうか。
 こういう違いを多くの人が好意的に感じるようになれば、国産麦芽の優位性にも繋がります。ぜひとも、これからますます上手く引き出してほしいです。
 全体としては、ドカンとした個性は無いものの、素直に美味しいと思えて、一口ひとくちのなかに、ふと気がつく特有の個性があるという印象です。飲んだ後に、もう一杯ほしくなるような、そんなビールです。暑いばかりの今頃の季節でも美味しく飲めると思います。