鉱産資源の囲い込みの話


 今朝の朝日新聞に、中国がリン鉱石の輸出関税を大幅に引き上げ、実質的に輸出を止めた状態にあると報じられていました。署名記事なので、配信ではなく朝日の独自記事でしょう。

 リン鉱石は、中国が最も多く産出していて、肥料に不可欠な鉱物です。これを中国が自国分を確保すべく、輸出規制に乗り出したわけで、先日の輸出規制で一躍注目された希土類(レアアース)と同じ事態がおこっているわけです。
 植物の三大栄養素のうち、窒素肥料は空気中の窒素を使って造られますが、カリウムも燐酸も、鉱物資源から得られるものがほとんど。ここ数年、カリウムも燐酸も高騰したままです。バイオ燃料で、肥料の需要が増えたのも背景にあるようです。まして、これから先、人口の増加に伴って、ますます必要になるというのに。

 中国は最近になって輸出規制を始めましたが、アメリカは20年近く前から産出量を減らしており、さらに続く地域も出てくるでしょう。こうした鉱産肥料の先行き懸念もあって、各国が自国分の確保に動いているとのこと。日本もそれに乗り遅れるなというような締めくくりでした。

 ただ、先日来話題のTPPが発効せずとも、日本農業が先細りなのが実情。肥料も必要でなくなると思う人もいるかもしれません。しかし、カリウムも燐酸も、農業に不可欠ですが、それ以上にさまざまな工業分野で使われてもいます。日本国内で農業が衰退しても安穏としていられるのは、工業が有力であればこそ。しかし、その工業は、輸入資源で成り立っているわけで、資源の囲い込みが始まったとき、農業以上に厳しい状況になるのではないでしょうか。
 21世紀はなかなかに大変な時代になりそうです。


 なお、先日の京都大学の学園祭、北部祭典で西村和雄さんが訴えていたのは、肥料資源が少なくなる、そう遠くない未来に、わずかな肥料で作物が得られる有機農業が、重要な技術になるというものでした。徐々に現実のものとなりつつあります。