鷹ヶ峰 樋口さんの畑の見学

 京の農ネット21というNPOがありまして、そこの主催する見学会に参加してきました。不思議なことに、ここの役員を頼まれて引き受けてます。あまり仕事をしてません。
 このころは店が忙しいはずですが、夏野菜の畑を見るには、当然ながらこの時期しかありません。それに見学先は、京野菜作りではかなり有名な樋口さんの畑です。そんなわけで行ってきました。見学先はうちから近くのはずですが、場所をよく知りませんから、大人しく集合場所に向かいます。集合場所は少々離れたところです。

 樋口さんは、物事に真剣に取り組む方で、自分にも厳しく他人にも厳しく、また直言居士です。とにかくズバズバと言葉が出てきます。説明を聞いて、畑見て、今度は質問。そういう段取りですが、一家言あるかたが本気で話し出すんですからとまりません。
 「食育」という言葉を旗印に行政がさまざまなイベントを実施しています。樋口さんもそれには協力してきたものの、「仕事」でやってる担当役人やイベントのあり方に疑問を感じ、実効性のあるものにするなら、百姓が独自に取り組むのが一番だと、近所の幼稚園児向けや取引先の見習い料理人向けの、野菜と料理のイベントを続けておられるそうです。また、いかにおいしい野菜をつくるか。そのために取り組んでおられる、品種選びや栽培管理などなど、非常に多岐にわたったお話でした。
 予定の時間を過ぎても終わらず、夕立の気配もしてきましたので、畑を見学。畑の説明を受けながら、種取をしておられる私の好物「鷹ヶ峰とうがらし」やトマト、水ナスなどを、生のまま味見させていただきました。さすがナスも唐辛子も、えぐみが全くなく、さわやかな甘さが感じられました。食べ物は論より証拠。食べればその差が歴然です。
 樋口さんの畑は、必要に応じて農薬を使う低農薬です。しかし、それはまず味を優先する、そして安全と思える範囲で極力控えて農薬を使うというものです。それだけに、野菜の味の良さは抜群でした。
 現状の農業技術は、味をよくする技術と、農薬を使わなくてもいいようにする技術は異なります。どんな味でもいいのなら、比較的簡単に無農薬栽培が可能ではあります。しかし、それはまずい野菜を作って、ますます野菜嫌いを増やすことにも繋がりかねないとの懸念もあります。危険度の低い農薬を適切に使った野菜をきちんと食べるのと、野菜嫌いで野菜を食べない偏食とでは、どちらが健康上問題があるかといえば、後者のほうが確実に健康を害します。それならまずは、野菜好きを増やすのが肝心だというのです。得心がいく話です。
 ところで、現在の樋口さんは、以前に怪我をされて半ば療養中であるため、本調子ではありません。もちろん、仕事も満足の行く形ではないそうです。手が回らず不十分な形の畑などもあり、むしろ今回よりも次回を愉しみにしてくれとのことでした。