京滋有機農業研究会 中村英司さん講演会

 京都や滋賀県有機農業に関心のある人たちが集まっている、京滋有機農業研究会の夏の例会です。
 講師は中村英司さん。同会の会員でもあり、滋賀県の農業関連の研究者として、あるいは大学の教育者として、特に戦後の滋賀県の農業を見てこられたかた。シベリア抑留から復員されているというお歳ですから、戦後農業の生き証人とも申せましょう。野菜栽培生理学を専門とされる農学博士です。(電照菊などが野菜栽培生理学の分野です)

 諸外国では盛んに行われている有機農業の研究ですが、不幸なことに日本国内では全くというほど行われておりません。検証も海外の文献に負うところが大きいのが実情のようです。そのため、農業の研究をしてきた人が、学術的な視点から有機農業のことを語っていただけるのは、非常に貴重な機会なのです。

 講演は、ご自身の研究者としての歩みと重ね合わせながら、戦後の日本農業の変遷を辿るところから始まりました。
 終戦から10年間くらいまで、農薬といえばボルドー液と砒酸鉛くらいしかなかったころ、試験場でも村の農地でも、虫や病気も発生こそしても問題になることはなかったそうです。しかし、60年代半ば頃から虫や病気の害が問題になり始めたのだそうです。それは、有機リン剤などの農薬が登場し、虫がいてもいなくても農薬を使う予防防除が行われるようになった頃。農薬を使うと一旦は虫や病気がなくなるけれども、翌年にはさらに多くの虫や病気が出るので、ますます農薬を使う。そんな悪循環が生まれた頃です。
 この不可解な現象は、例えば天敵がいなくなるからだとか、抵抗性が生まれるからだとか説明されてますが、他にも理由があるのが分かってきたそうです。実は農薬や化学肥料の使用によって、たんぱく質やでんぷんの合成が阻害され、植物の体の中にアミノ酸や糖分が増加して、虫や病気の被害にあいやすくなるのだそうです。

 さて、こうした話は、有機農業が語られるときに、よく聞くことのできる話です。そして、有機農業に転換して、農薬を使わずに虫や病気が抑えられるという話も紹介されます。しかし、有機農業でも非常に克服困難な問題として、微量栄養分の欠乏の事例があるそうです。キレート剤による対処を行うのが最善の方策であるとのことでした。しかし、雑草を使った予防の可能性を示唆されておられました。
 これが、日本農有機農業家を大いに悩ます雑草の可能性かもしれません。

 こうした講演会で、つたない司会を失敗だらけでやっておりました。打ち上げはビアガーデンだったのですが、そういえばビアガーデンは初めてでした。なかなか面白いものでした。