暑気払いの酒の会

yamaokasakeya2006-08-09

 当店のお酒の会は、毎回毎回、日本酒と地ビールを主題にしてきました。何回か別の酒を脇で紹介したことはありますが、日本酒も地ビールも出さないのは今回が初めて。取り上げたのは、歴史的に夏の暑気払いに飲まれてきたお酒が主です。
 今回少々心配がありました。今までお燗は散々しましたが、水で割ることはほとんどなかったのです。お恥ずかしいことながら、それむきの道具もありません。まあ、それでもなんとかなりました。使ったのは計量カップ。名より実です。
 参加いただいたのは7人の方々。暑気払いといいながら、込み合って最初から暑いなかでのお酒の会になりました。何回か来て頂いているかた4人と、2回目の方が3人。良い塩梅です。

 お出ししたのは次の通り。

尾瀬の雪どけ 梅果恋(梅ワイン)
招徳     梅りきゅーる(純米酒りきゅーる)
花見蔵    酒蔵の梅酒(日本酒使用の梅酒)
福来純    柳蔭
花見蔵    本直し
福来純    梅美醂

 梅果恋は、梅果汁のみで作られたワインで、補糖も保存料添加もありません。そのため、年によってアルコール度数も変わり、ことしは9度ほどだったそうです。もちろん要冷蔵。
 要冷蔵ということもあり、冷たいままで出したのですが、時間がたってぬるくなってからのほうが、甘味が引き立って好評でした。

 招徳の梅りきゅーるは、同社の純米酒でつくった梅酒です。普通の梅酒にはない、日本酒の風味との調和が面白く、興味を持ってもらえたようです。
 この商品は、発売から何年もたっておらず、まだ日が浅く、味の組みたても試行錯誤されておられる様子。初めてうちで仕入れたときの梅リキュールの味を覚えておられる方も参加してくださってましたが、やはり味の変化には気づいておられました。
 以前に比べて、梅の風味が前面に出ている印象です。この夏仕込んでおられるのも、また味が変わるようで、今度はどうなるか楽しみです。

 酒蔵の梅酒は、純米酒と焼酎から作られた梅酒です。製造元の白扇酒造さんは、元来味醂のメーカーさんで、味醂の製造のために、日本酒と焼酎をつくり、さらにみりんベースの梅酒も作ってこられました。だから、この商品はある意味この蔵の集大成かもしれません。
 度数は12度ほどと高くありませんが、お酒がずいぶんとろりとしていて、味もかなりこってりしています。普通の梅酒を割って12度ほどにしたら、ここまで
とろりとしてませんから、ある意味不思議な梅酒です。

 さて、梅酒をいったんお休みし、次は柳蔭。落語の「青菜」にも出てくるかつての高級酒。ただし、大正時代には酒税の関係で清酒が高値になり、むしろ割安な庶民のお酒になっていったもの。当時から夏の飲み物でした。みりんと焼酎とで作られているのですが、絞りたての若い味醂を使ってできているため、白っぽい色をしています。
 もともとが20度以上あり、割って飲むのですが、割る前と割ってからを比べてもらったところ、度数の高さにもかかわらず、割る前のほうが好評でした。飲みやすい20度以上のお酒です。ある意味怖いお酒です。

 おなじく白扇酒造の本直しです。本直しも柳蔭も本来同じものですが、同社では、若い味醂を使ったものを柳蔭、熟成した味醂のものを本直しとして出しておられます。色もほぼ味醂のような色です。スーパーの特売に並ぶような味醂と比べたら、こちらのほうが濃いくらいです。
 熟成が進んで知る分、甘味もまろやかで、旨味も多く、味全体に深みがあります。柳蔭とはずいぶん印象が違います。同じく割ったものと比べてもらったのですが、こちらは割ったものの方が好評でした。

 最後に梅美醂。引き続き白扇酒造です。梅酒の中でも最も個性的ではないでしょうか。味醂で造った梅酒です。同社の人気商品三年味醂がベースになっており、糖分は味醂のものだけ。新たに加えていません。そのため、非常にまろやかな甘さです。こちらは、そのままでよし、割ってよし。
 やや甘さが強めですので、割ったほうが甘味が抑えられて、酸味と甘味のバランスがよくなると思います。

 ここまで紹介して、気づかれた方はあるでしょうか。いずれも糖分の多いお酒です。夏に飲むのは、水のようなビールかカチ割りの焼酎というのは、ごくごく最近の話。それにそういうのみ方は、体が冷えるだけで、栄養の補充にはなりません。古来の甘いお酒を冷やして飲むのは、涼を得るだけでなく、胃腸が弱って食欲がおち、不足しがちな栄養を補って夏ばてを防ぐ効果もあったのです。非常に理にかなっています。
 皆さんも一つお試しください。


 最後に余興といっては何ですが、先日の店のブログで紹介した、静原の玉子の黄身を摘まんでみました。直にみてもらうと違いますからね。しかしまた、写真を撮りそこないました。画像はもう少しお待ちください。