5年10年20年

 大学を卒業してそのまま酒屋になりましたので、他の方がしたような就職活動をしたことがありません。その代わりと言っては何ですが、商売をやるのに役に立つようにと、いろいろな話を聞いて回りました。
 そのなかで気付いたのですが、業種やら土地に関係なく、人の評価は何年やってるかで左右されるんだということ。5年ほどやってようやく信用される、10年やったらだいたい一人前と見なされる、20年もやっていると一通りのことが分かる人になる。中身のほうも、だいたいそうなるみたいです。
 もちろん、図抜けた才能や適正のある人が努力をすれば、これよりうんと短い期間で高い評価と実力を得ることもありますが、普通にやっていればこれくらいの期間で、それなりの評価がなされ生身もできるらしいときづきました。

 自分が商売に不向きな性分なのは分かっていましたから、こういうことがわかって少し安心したところがあります。いくらか人よりも工夫すれば、人並みの評価も得られるだろうし、結果もでるだろうということです。
 とりあえず5年というのも、気楽に思えました。結局大学に5年いたわけで、それと同じですが、大学での生活の早さと社会人の人たちの早さでは、ずいぶん違います。なんとなくですが、学生時代は一週間をサイクルにして行動していました。たいして社会の動きは一ヶ月を基準に回っているように思えました。大学よりも緩やかな流れで、大学生活と同じくらいの時間を過ごせば、一応の信用が得られるわけです。
 そんな気楽さで、酒屋になって8年。地ビールを初めて5年と少々。
 まだ10年になりませんが、5年目くらいから、色々な人たちが助けてくださるようになりました。地ビールも、それこそ日本中の地ビールの関係者の方々から、いろいろ手助けいただけるようになりました。
 5年がたって、信用ができかどうかは分かりませんが、評価が変わったのは確かです。酒屋になってもうすぐ10年です。こちらのほうは一人前には、まだまだずっとかかるような気がします。