栽培から仕込まで

 以前から、地元の米を使った日本酒を造ったり、あるいは蔵元自らが米作りをして、それを酒にするという取り組みがなされています。日本の気候風土の中で、稲作と日本酒作りが、ともに歩んできたからこそできる取り組みでもあります。
 ブドウの良し悪しが発酵の成否を大きく左右するワインに比べると、日本酒の場合は、米の差がそこまで発酵を左右しないと言われます。それでも、酒造りに向いた米の質を稲作に反映させて、より良いお酒を造ろうとする取り組みでありますから、大いに評価したいです。それに、地元の酒蔵として地元との結びつきを強めることにもなるでしょうし。
 また、国産ワインも、輸入されたジュースを使うようなことをせず、自前のブドウ農園からワインを作るところが増えてきました。こちらは果樹ですから、十年以上にわたる準備を経てのことですから相当なご苦労です。

 さて、ここに来て、地ビールでも同様の動きが出てきました。以前から、ビールに果汁を加えて作るフルーツビールでは、地元名産の果物を使ったものが色々と作られてきました。他にも地元のお米を使ったり。しかし、ビールの素材と言えば、一番に麦芽とホップです。
 この二つ、いずれも高品質のものを国内でとなると、少々栽培しにくいです。それでも実績があるので可能は可能なんですが、さらに麦芽作りとなると、設備と技術の両方で、軌道に乗せるのはさらに大変になります。

 それでも、ここへ来て、素材から自前で用意しようとする地ビールメーカーが急に増えています。
 もともと、岩手県のいわて蔵ビールさんのように、およそ十年前から自前の麦芽作りに取り組んでこられたところもありますし、ホップ作りに取り組んでこられた志賀高原ビールさんのようなところもあります。
 これに続くように、新潟麦酒さんも地場産の大麦から麦芽を作る取り組みを進めておられたり、ホップ作りでは、新たに三社が取り組まれる方向だと聞いております。

 こうした動きは、海外の穀物やホップが需要の増加と不作で、高騰し入手も難しくなっているのが追い風ですが、この動きは簡単に止まらないでしょう。農産物や農産加工品というのは、地元産ということ自体が価値を持ちます。地場産原料を使ったビールも、一定以上の品質を持っていれば、大ヒットは難しくても、手堅い人気を保つでしょう。
 実のところ、そういう商品を扱いたくて、いまかいまかと楽しみにしております。