大手はビールをどう売るのか

 最近、ビール離れと言われて、その対策にと大手も新しい商品を繰り出していますが、では商品はさておき、売り方ではどうなのでしょうか。


 ずいぶん昔は、大手もさほど新商品を出しませんでした。売れるものをきちんと売っていくという堅い商売だったんでしょう。

 80年代くらいからでしょうか。ずいぶん頻繁に新商品が発売されるようになりました。発泡酒が出来てからは、さらにその勢いを増します。四社合計を平均すれば、月に一つ近い頻度になってるんじゃないでしょうか。それを支えたのは、メーカー、問屋、酒屋をつなぐ強固な流通網でした。
 酒屋が免許制に支えられていた当時、サントリー以外の大手のビールは、新商品を出せば日本中の酒屋が1ケースは仕入れている、そういう状況でした。一昔前、うちは酒以外にも色々扱って、それでどうにかやりくりしていましたが、そんな小商いでも新商品は5ケースや10ケースは仕入れていました。つまり、最低これだけは売れるという非常に確かな見通しが最初からあり、それに見合う開発費と宣伝費を投じて利益を売るという、実に見事な商法が確立していたわけです。
 こうした売り方は、酒屋からコンビニや大型店に酒売り場が移った現在も生き残っているはずです。棚には新商品の指定席があり、順に商品が入れ替わっていきます。その間に大量のテレビ宣伝がなされ、ある程度以上の売り上げがあって経費は回収されています。

 こういう売り方を重ねてきて、いつのまにか新商品が使い捨てになったようです。人気が出て定番化すると、それはそれで利益に結びつくので歓迎されますが、じっくり腰をすえて売るということはなくなりました。スーパーやコンビニは取扱い商品の見直しが素早いですから、この傾向はさらに強まっているでしょう。

 しかし、今までとは違った商品であるほど、評価されるのには時間がかかりがちになります。加えて工夫や手間もいるでしょう。新商品開発だけでなく、どこかで営業面でも転換しないといけないのです。
 実はすでに成功事例があります。例えばキリンのハートランドです。発売当時の人気のビールとは違った方向性の商品で、すぐに売れなくなると考えられていた商品でした。それに発売直後と発売十周年の時期にテレビで宣伝したほかは、目立った宣伝はされていません。しかし、売り上げはずっと伸び続けています。
 私の見る限り、大手にとってのビール離れを切り抜ける方法は、ここにしかないと思います。しかし、今までの営業の方法に比べると、かなりしんどいやりかたです。見直されるときがくるのでしょうか。なんとも分かりません。