サンクトガーレン アップルシナモンエール 450円也 

yamaokasakeya2008-10-25


 サボっていたツケで、なかなか日記が追いつきませんで大変です。今回は、今月の20日から発売してる、アップルシナモンエールです。サンクトガーレンさんが挑戦するスイーツビールの秋の限定品です。今年で二年目。アップルパイをイメージして、リンゴとシナモンを使ったビールです。
 率直に言って力作です。シナモンの香りが華やかで、なるほどアップルパイの香りです。これは面白い。先日の日記でも紹介しましたが、ビールの原料に使ったからといって、その素材の風味がビールに上手く反映されるわけではありません。入れたはずだけれど、さっぱり香りや味が感じられない場合はざらにあります。素材らしさが現れるなんて、例外的なのかもしれません。

 リンゴの場合、私の知る限り、ビールに使うには難しいものだと思います。生鮮果実の香りは加熱で消えやすく、残ってもビールを飲むような低温では引き立ちません。また、甘さが発酵で失われると苦味と酸味が残るわけですが、苦味はホップにかき消されるか、場合によっては悪印象になります。
 酸味はそもそも甘さがなくなると引き立ちませんし、酸味がかなり強い品種でも、ビールになっても個性が発揮できるほど強くありません。

 リンゴのビールを飲むのはこれで三種類目ですが、それぞれご苦労がうかがえました。
 一つは、小江戸ビールの りんごミュニッヒ(廃盤)。糖類と香料が使ってありました。甘さと香りを補ったわけです。しかし、よくある話で、香料が使われると、違和感が生まれて好まない人が多くなります。

 二つ目は、ベアレンのアップルラガー(もうすぐ発売秋限定)。発酵末期にリンゴの果汁を加えてすぐさま加熱処理をしたものだと思います。それだけリンゴ果汁の印象が強かったのですが、ビールの風味との相性についてはこれまた好みが分かれました。リンゴ果汁の甘さとビールの苦さの組み合わせが苦手な人が多いのです。ほとほとリンゴのビールは難しいです。

 三つ目がこのアップルシナモンエールです。
 名前の通りシナモンを使って、アップルパイを思わせる香りです。リンゴの香りは予想通り弱いです。シナモンが実に良い香りなので、そちらのほうが印象深いです。ちなみに、うちの母は生のニッキの樹皮を食べたことがあり、シナモンやニッキの香りにはうるさいのですが、この香りは褒めていたくらいです。香りの良いのは保証できます。
 味はしっかり発酵させてあるため、甘味はほぼありません。焦げた風味がほどよくあり、飲んでいるときにほどほどの苦味も伴っています。これ単独でアップルパイと言うよりは、甘いのが苦手な人が』アップルパイを連想しながら食べるか、はたまた甘い洋菓子を用意して、それと調和させながら食べるか。そういう楽しみ方が似合うようです。

 こういうふうに、別の香りや味のものと組み合わせて、その素材を連想させるというのは、実は身の回りでよくあります。例えばお好み焼きの香りはソースの香りだし、おでんの香りはおおかたが大根の香りです。
 このアップルシナモンエールも、シナモンの香りが強いですが、それでアップルパイを連想させるという手法です。なかなかに上手い演出だと思います。こうした手法は他のビールでもごく一部取り入れられています。研究すると面白そうです。勉強になりました。
 なお、シナモンなどを使った場合、ビールと馴染まないと感じる方は必ずあります。このへんは慣れの問題ですね。以前はヴァイツェンをバナナの香りのビールなんてとんでもないと、受け入れられなかった人が大勢いたわけですが、すっかり定着しましたし。